いじめゼロを目指して

子供の社会性形成は年齢とともに成長する

「いじめ防止教育」の難しい点は、
子供の発達段階ごとにいじめの特徴が異なっているということです。

 

なぜなら、子供の社会性は発達段階(年齢)とともに成長していくから。
小学校低学年と高学年では、他者との距離感の感じ方・取り方も違います。

 

当然、人間関係の中で生じるトラブル=いじめの特徴も同じではありません。
ですから、いじめ防止教育をするのであれば、
それぞれの発達段階を考慮した教育が必要です。

 

ここでは、それぞれの発達段階におけるいじめ防止教育で
注意すべき点をご紹介していきたいと思います。

★児童期低学年(小学校1〜2年生)

親以外の大人(先生)との関係を構築する発達段階でもあり、
自分の力で友達をつくる段階でもあります。
当然、自分と他社を比較するようになるでしょう。

 

自分の主張はできるようになっているものの、
まだ他者へ配慮できるような段階ではありません。
そのため、自分の感情を上手に表現できないことから手が出てしまったり、
コミュニケーション能力の未熟だから相手との関係をこじらせてしまったりします。

 

この段階では、自分の非を素直に認めて謝ること、また、
相手に同じようなことをされた場合はそれを“許す”ことを学ぶのが課題。

 

親や教師は、トラブルの発生を防ぐことではなく、
何かあった場合に「どうやって相手との関係を修復すれば良いのか」を教えて
自ら“仲直り”させる機会を与えることに主眼を置くべきです。

 

★児童期中期(小学校3〜4年生)

複数の友達同士で、ルールのある遊びができるようになる発達段階です。
(鬼ごっこ、かくれんぼ、ドッジボール、サッカー、野球など)

 

複数人のグループ単位で遊ぶことが多くなり、その仲間と秘密を共有したり、
共通の敵を作ったりすることで連帯感を感じるようになります。
そのため、必然的に仲間外れや“無視”などのいじめ行為が出てくるようになります。

 

この時期の教育で大切なことは、
本人たちが遊びの延長で行っているつもりの行為が相手をどれだけ傷つけるか、
相手がどう感じているかを学ばせること。

 

お互いが感じていることを“言葉で伝える”場を設けることで、
伝える技術や感じる力を養うことが大切です。

★児童期後期(小学校5〜6年生)

中期に比べて、グループの単位も大きくなってきます。
また、部活動や学校外のサークル、塾や習い事など、
学校以外の場所で人間関係を築く機会も増えてきます。

 

その結果、人間関係のトラブルも起きやすくなる時期。
仲間はずれや無視はもちろんのこと、本人に聞こえるように悪口を言ったり、
ネット上の中傷を書き込んだり…と、“心理的”ないじめが多くなります。

 

また、プライドが育ってくる発達段階でもありますので、
いじめられていてもその事実を認めることができなくなってきます。
そのため、誰にも相談できずに一人で抱え込むケースも多いようです。

 

この発達段階では
「いじめはしてはいけないことだ」
そして、
「いじめられている=弱いことではないのだ」
と、明確に認識させることが大切。

 

本音ではいじめに加担したくないのに、
属している集団の流れに押されていじめに加わっている子供も多いので、
自分の行為を客観的に見つけ直すきっかけを与えることが必要です。

 

自分がしていることはどういうことなのか、自分はどうすれば良いのか。
子供たちが自力で答えを導き出せるよう、近くでフォローしてあげるのが
周りの大人たちに課せられた役割でしょう。

★青年期初期(中学生)

家族、学校、クラス、地域社会…と、自分が所属する社会全体における
自分自身の“立ち位置”や“役割”を意識するようになる発達段階。
これまで以上に、義務や権利、自由や責任などへの意識も高まってきます。

 

しかし、まだまだ自己中心的な思考に走りがちな発達段階ですので、
納得がいかないことがあった時や自分のやり方を制限された時には
ストレスを感じやすい傾向があります。
このストレスを他者への攻撃=“いじめ”や
社会への反発といった歪んだ形で発散させてしまうことも多いようです。

 

また、集団内での優位性を誇示するために“いじめ”を利用するケースもあります。

 

対策としては、そのいじめ行為の根本にある
“原因”から逃げずに向き合うきっかけを与えることが大切です。
問題に直面することからの“逃げ道”としていじめを利用している可能性もあります。
(問題とは、例えば家庭問題や進路の悩みなど)

 

自分の内面と向き合い、自分の行為を客観的に見つめるきっかけを与えること。
一方的に批判するのではなく、
本人を受け入れることで「自己肯定感」を高めてあげること。

 

…そのためには、周りの大人との間に“信頼関係”を築き
少しずつ心を開かせることが必要です。

 

【参考】
岡本祐子・大坪治彦 編『よくわかる発達心理学』ミネルヴァ書房 2004
東京都立教育研究所編『いじめの心理と構造をふまえた解決の方策』1999
福岡県教育センター研修資料 「いじめのメカニズムとその対応」 

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