いじめゼロを目指して

強い攻撃性に秘められた過去

普通はサラッと流せるような些細なことで
攻撃性を感じやすい人(子供も大人も)というのは、
幼少期に親など近親者から虐待を受けていた可能性が高いのだそうです。

 

その時に感じた強い不安感や恐怖感を
心の奥底にしまい込んだまま成長すると、
何か不安を感じる場面に直面した時に
人並み以上に恐怖心や攻撃性が強く出てしまうのだとか。

 

このような原因に起因する攻撃性を治療するには、
心の傷が深い場合は、
虐待されていた出来事自体を思い出せなくなくなっている場合もあります。

 

辛い作業にはなりますが、攻撃性を治療するためには、
その記憶を掘り起こさなければなりません。

 

過去に受けた心の傷=トラウマというものは、
その地点まで遡って向き合うと、次第に解けていくものです。

 

「不安だったんだよね」「怖かったんだよね」と、当時の自分自身をいたわり、
心の底にこもっている不安感や恐怖感を表に表出させてあげるのです。

 

イメージとしては、傷の“膿を出す”作業に似ていますね。

 

トラウマを克服すれば攻撃性も低減する?

幼い頃に虐待を受けた経験を持つ人は、
その相手に対する強い攻撃性を心の中に封じ込めたまま
成長しているケースが多いようです。

 

人間に対する不信感から、他人に頼るのが下手で、
周りの人よりも早く“大人”になることを強いられている傾向があります。

 

このようなタイプの人は、人前で自分の素直な感情を出すのが苦手。
本音を言わず、嫌なことがあっても我慢してしまいがちです。
すると、その“我慢”が、攻撃性をさらに助長することになってしまうのです。

 

トラウマを治療するには、負の感情も含めて、
心で感じていることを表に出すことが必要です。

 

とはいえ、感情を抑えることに慣れてしまった心は、
そう簡単には溶けだしてはくれないでしょう。
トラウマの治療には時間がかかるのです。

 

しかし、トラウマという氷が心の中に残っている限り、
心の奥底にある恐怖心や攻撃性は消えません。

 

事実を認めること、向き合うこと、受け入れることがどんなに辛くても、
過去と対峙しなければ、今もこれからも、
本当の意味で自分を幸せにしてあげることはできないのです。

 

攻撃性を払拭できない自分を責めるのではなく、
過去が自分の心にどのような傷を負わせたのか、
事実を認識してその壁に立ち向かわなければなりません。

 

そうすることでしか、失われた自信を取り戻すことはできないのです。

遺伝子変異が性格を攻撃的にする!?

「小さい頃から虐待を受けてきた人は他人にも攻撃的になる」
という説は心理学の世界ではもはや常識のようになっているわけですが、
この説に関して、非常に興味深い研究結果が得られています。

 

これは、スイス連邦工科大学ローザンヌ校の
Carmen Sandi氏の研究チームの成果。
マウスを使った実験によると、
子どもの頃から様々な心的ストレスを与えて育てると、
子供の頃の経験が脳の形成に深く関与し、
その結果として攻撃的な大人になっていくことがわかったのだとか。

 

ストレスフリーな環境で育ったマウスは、困難な状況に陥っても
脳の「眼窩前頭皮質」が活発化して攻撃的な衝動を抑えることができるのに対して、
ストレス環境下で育ったマウスの眼窩前頭皮質はほとんど機能せず、
攻撃性をはじめとするネガティブな衝動を抑えることが難しい
という特徴があったといいます。

 

また、幼児期に受けた虐待は
脳内のMAOA遺伝子を変異させることも判明しており、
その変異が攻撃的な性格を作り出していることも明らかとなりました。

 

※MAOA遺伝子とは、
脳内でセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質を分解する
酵素(モノアミン酸化酵素A)の活性を調節する作用を持つ遺伝子のこと。
攻撃性や衝動性の高さに影響を及ぼすと言われており、
MAOAが完全に消失している場合は、
攻撃的になるのが確かめられています。

 

さらに注目すべきは、
この変異した「MAOA遺伝」を修正することが可能だということ!
この遺伝子の働きを正常化することができれば、
トラウマを抱えて攻撃的になった脳を
元の状態に治療することができるかもしれません。

 

まだまだ研究途上の段階ではありますが、
いじめにつながる“攻撃性”をコントロールする有効な治療法として
期待が高まるところです。

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