いじめゼロを目指して

「攻撃性」は測定できるもの?

人の内面に潜む「攻撃性」については、
古今東西、様々な実験研究が行われています。

 

また、その際に、「攻撃性」を測定する方法として、
様々な“尺度”が用いられています。
(“尺度”とは、簡単に言うと、「質問」です。
心にはものさしを当てることができませんので、例えば、
「“悲しい”という気持ちを、1〜10で表すとどの程度感じていますか?」
「“イライラ”は1〜10で表すとどの程度ですか?」
といった具合に、感情を数値化して“測定”するのです)

 

その中で、興味深い例をいくつか紹介してみましょう。

 

【補足】
尺度とはちょっと違いますが、「PFスタディ」という心理テストも、
攻撃性を測定する際には重宝します。(筆者は大学の卒論で使用しました!)
PFスタディは、正式には「絵画欲求不満テスト」というテストで、
ワシントン大学の ソールドーゼンヅアイク博士によって生み出されたもの。
欲求不満を感じるような状況の漫画絵があり、
空白になっている吹き出しの中に「どんな言葉を入れか?」で、
その人の内面を知るという心理テストです。

 

欲求不満状況でも穏便な対応をする人もいれば、
過度に攻撃的な言葉を入れる人もいて、
なかなか興味深い結果が得られます。

攻撃性には「自己評価」の高さが関係している?

まず、福岡県立大学人間社会学部で行われた研究内容です。
(参考:福岡県立大学人間社会学部 紀要 著者:菊浦友美氏、吉岡和子氏)

 

研究では、まず、いじめを「攻撃的なコミュニケーション」と捉え、
現代青年の友人関係の希薄化との関連性を指摘しています。

 

考察としては、次のような内容がまとめられています。

 

・相手に自分の気持ちを直接表現する
  (要するに、言語的なコミュニケーション)場面で表出される攻撃性は、
  自己評価や肯定的態度などの心理的な要因との関連が強い。

 

・ネットの書き込みや態度などで“間接的に”自分の気持ちを表現する場面では、
 「相手とどのような対人関係にあるか」によって攻撃性の表出が左右される。

 

確かに、いじめは一般的に
「コミュニケーション能力のなさが原因」とも言われています。
人とうまくコミュニケーションをとれない子供が、
人との会話に攻撃性を表出させてしまうというのは
無理もないことなのかもしれません。

 

自分の周囲を見て見ても、友達との交友関係が希薄となっているために
人と深くつながることに対して苦手意識を持っていたり、
うまくコミュニケーションがとれないことに対して
苛立ちを抱えている若者が多いように感じます。

 

その結果、積極的に働きかけることができなかったり、
コミュニケーションが知らず知らずに「攻撃性」を帯びてしまったり…。

 

要するに、自己表現=アサーションの方法がよく分からないのでしょうね。

 

さて、この実験で攻撃性を測定するツールとして使われたのは、
「敵意攻撃的インベントリー」です。
これは、Buss&Durkee(1957) による「Hostility-GuiltInventry(HGI)」という
攻撃性測定法を参考にして作成された尺度。
個人の攻撃行動や攻撃性の程度を多面的に測定することを目的とし、
7つの下位尺度から構成されています。
(例:言語的攻撃性、間接的攻撃など)

新しい攻撃性測定法を作る

「心理系の大学って、どんなことを研究しているんだろう?」
「心理系のゼミって、どういう内容で論文を書くの?」
…そんな疑問を抱いている方も多いことでしょう。

 

心理系研究室の研究内容は、専攻によって様々ですが
攻撃性を測定するために
「新しい尺度を作る」という研究を行っている研究室もあります。

 

最もオーソドックスなのは、「攻撃性」についての既存尺度を参考にして
新たな攻撃性尺度を作成するという研究。
従来、「攻撃性」を測定する尺度といえば、
犯罪者や問題行動を起こす児童を対象とするものがメインであったため、
最近は「普通の教育現場に応用できる測定尺度を!」
というニーズも高まっているようです。

 

子供の攻撃性といじめの関連性も指摘されている昨今、
こういった「攻撃性測定尺度」の充実は、
心理学分野に期待される今後の課題の一つといえるでしょう。

具体的な研究の例

興味深い研究結果としては、関西大学が発表している
「日常生活での攻撃的行動を測る」という論文が挙げられます。

 

この論文によると、攻撃性は
次の6つの因子(要素)に分かれることがわかったのだとか。

 

その6つとは、

 

・自己主張性・積極的に発言する因子
・短気因子
・目立ちたがり屋・負けず嫌い因子
・支配・強制・他者を見下したり悪態をつく因子
・警戒心・他者を信用しない因子
・仕返し因子

 

さらに、攻撃性の“質”に男女差はほとんど認められず、むしろ、
大学生―中学生間の攻撃性の質の違いが大きかったことも指摘されています。
(大学生が自己顕示性、競争心、そして警戒心が高いのに対し、
中学生は短気さ、支配性、報復心が高かったそうです)

 

また、イライラの発散方法として
「物(時には人)に当たって発散する」というタイプの人が最も攻撃性が高い
という結果が得られたのだとか…。

 

いじめは、「人に当たってイライラを発散する」例の最たるもの。
やはり、いじめと攻撃性の高さには密接な関係がありそうですね。

 

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