いじめゼロを目指して

いじめっ子の脳に関する興味深い研究結果

少し古い話になりますが、
2008年の11月の「National Geographic News」に掲載された
いじめっ子の脳についての研究結果をご紹介しましょう。
(ここで言う「いじめっ子」とは、ケンカっ早かったり、キレやすかったり、
嘘をついたり、物を壊してはしゃいだり…という
典型的な“やんちゃ者”を表しています)

 

シカゴ大学の心理学者ベンジャミン・レイヒー氏によれば、
いじめっ子の脳には、
「他人の苦しみを見ると喜びを感じる回路」
が備わっている可能性があるのだとか!

 

それまでの研究では、
「人は、他人が苦しんでいる姿を見ると、
自分がその苦しみを経験した時と

同じ脳内領域が活性化する」
ということが確認されていました。

 

それだけに、いじめっ子の脳に見られた前述のような特徴は、
実験者であるベンジャミン・レイヒー氏にとっても意外なものだったのだとか。

 

この結果をよくよく考えてみると、なんとも悪趣味で、恐ろしいことですよね。
人が苦しんでいる姿を見て、喜び(快感?)を感じるわけですから…。

 

器質的にそういう特徴があると証明されてしまえば、
「どんな教育をしても、いじめをなくすことは無理なのか?」
という絶望感さえ覚えてしまいます。

具体的にはどんな脳内反応が起こっているの?

では、いじめっ子の脳内では、具体的にどのような反応が起こっているのでしょう。

 

ベンジャミン・レイヒー氏らの研究では、
脳のfMRIスキャンを用いて脳内の変化を記録しています。

 

これによると、いじめっ子の脳では、人が苦痛を感じている場面では
喜びに関係する脳内領域=扁桃体や
腹側線条体が活性化することが確認されたというのです。

 

つまり…、

 

いじめっ子は人の苦痛を見るのが好き
↓(それが正しければ)

いじめっ子は、いじめ行為によって他人を傷つける度に
心理的な報酬(喜び)を受け取っている


その結果、反応の強化が進んでいることになる。
(つまり、いじめ行為が助長される)

 

 

…という仮説が考えられます。

 

【具体的な実験手順】
(対象者):
うそや窃盗、公共物破損、弱い者いじめといった経歴を持つ16〜18歳の少年8人。
いずれも、攻撃型行為障害(aggressive conduct disorder)と呼ばれる
症状を持っている。
また、比較対象としては、
そのような経歴を持たない同年代の少年グループを設定。

 

(実験手続き):
苦痛の状況を描く短いビデオ映像数本をいじめっ子グループに見せた。
(映像の内容:つま先に金づちが落ちるシーンなど不慮の事故を描くもの)

いじめは脳の病気なの?

いじめっ子の脳に特徴的な動きが見られたことは事実ですが、
この分野の研究はまだ始まったばかり。
断定的なことは言えないのが実情です。

 

実は、日本のTV番組でも、
いじめっ子の脳内メカニズムについて触れた番組がありました。
それは、フジTVの『ホンマでっか!?TV』です。

 

この番組の中で、脳学者の澤口俊之先生が、

 

「脳内の前頭前野や扁桃体、側頭葉が8〜16%程度萎縮していると、
反社会的、攻撃的、反抗的な行動パターンをとる特徴がある」

 

「相手の体や心の痛みを感じることができず、
痛めつけることで快感を得るという特徴があり
臨床的には“行為障害”と診断される」

 

…といった内容のことを話していたことがありました。
全てのいじめ加害者が
そのようなケースに当てはまるというわけではないにしても、
これもまた非常に興味深い研究結果であることは確かです。

 

もし、脳の器質的な問題が原因でいじめを行っているとすれば、
通り一遍のいじめ防止教育をしても全く意味がないでしょう。

 

「他人を傷付けるたびに心理的な報酬を受け取り、反応が強化されている」
という、その心理メカニズムをフォローできるような、
専門的な治療を施すことが必要不可欠。

 

これからどのような方向で研究が進められていくのか、要注目の分野です。

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